今、世界にどのくらいの数の大道芸人がいるのでしょう。恐らくものすごい数だと思います。国によっては、国家的に奨励し、海外に送り出している所もあります。たとえばボリビアとか。又、ジプシーのように、民族的な特色として芸能の才能が高く、定住を嫌う人達もいます。
私は東京都でヘブンアーチストの審査をして、書類審査も含めて約2000人の芸人を見ました。これは東京都だけ、申請者だけのことで、都内に本当はどの位の芸人がいるかは分かりません。まして日本全国となると。
しかしこの人達を全てアーチストと呼ぶわけにはいかないのです。アーチストとは弛まぬ鍛錬、考え抜かれた独自の構成、演出、そして天分が無ければなりません。アーチストはいつも緊張し、苦しんで演技し、演奏して観客を楽しませます。もちろん本人はその瞬間が大好きなのは言うまでもありません。このようなアーチストがストリートで演じた時、それは観客に楽しさの外に時には人生に係るような影響を与えるのです。
20世紀初頭の天才魔術師フーディーニはロンドンでの大道芸人時代、その鮮やかな脱出芸でロンドン市民に彼らの絶望的な貧しく苦しい生活環境から自分も抜け出せるのではないかと思わせ夢を与えました。観客にとって大道芸を見ることは多くの場合偶然の出会いです。それは大道芸フェスティバルの観客にとっても、見るショーは出会いです。芸人はショーが終わると群衆の中に姿を消してしまい、後で隣に立っていても見分けがつかないことが良くあります。それ故、劇場で見るのと違った大きな印象を受けるのです。その一瞬の出会いが素晴しいアーチストであればそれは一生の思い出となるでしょう。私のプロデュースの大道芸フェスティバルはそのようなアーチストで構成されているのです。観客はより深い楽しみを見つけることでしょう。